高齢者ドライバーの事故防止に運転免許証に制限導入検討 (NHKニュースより)

社会問題化している高齢者ドライバーの事故防止の対策として、警察庁は、75歳以上のドライバーが運転できる車や時間帯、道路などを限定した運転免許証を導入するかどうか検討を始めることになりました。

高齢者ドライバーの事故防止の対策について、ことし1月から検討を進めてきた大学教授や医師などからなる警察庁の有識者会議は、30日、条件付きで運転を認める運転免許証や実技試験を導入できるかどうか検討すべきだなどとする提言をまとめました。

これを受けて、警察庁は75歳以上のドライバーが運転できる車や時間帯、それに道路などを限定した運転免許証を導入するかどうか検討を始めることになりました。

具体的には、運転できる車をアクセルとブレーキの踏み間違いによる急加速を防いだり、歩行者や前を走る車との衝突を自動ブレーキで防いだりする機能など、最先端の安全技術を搭載した車両に限定することや、日中の時間帯や一般道路に限って運転を認めるといった条件をつけることが可能かどうか、検討するということです。

さらに80歳以上のドライバーの一部については、3年に1度の運転免許証の更新の際などに、実技試験を課すかどうかについても検討するとしています。

一方で、提言では運転免許証を自主的に返納したり認知症と診断されて取り消されたりした高齢者の移動手段の確保といった生活の支援にも努めるべきだとしていて、警察庁はこうした課題についても検討を進めることにしています。

現行制度と実技試験の想定

日本の道路交通法では、75歳以上のドライバーは3年に1度の運転免許証の更新の際、判断力や記憶力を調べる認知機能検査と、高齢者講習を受けることになっています。
警察庁によりますと、提言を受けて実施するかどうか検討を始める実技試験の対象は、80歳以上のドライバーのうち過去に交通事故を起こしたり交通違反を繰り返したりしたといった点から、事故を起こす危険性が特に高い人に絞ることが想定されるということです。

80歳以上では、去年12月末の時点で209万46人が運転免許証を保有していますが、高齢化に伴い今後も増加が見込まれていて、実技試験が導入された場合には、実際に車を運転し信号を見落としていないかや、交差点の手前で安全に停止できるかといった点をチェックし、一定の点数以下だった場合、運転免許証を取り消すことが想定されるということです。

海外の限定条件付き免許

警察庁によりますと、限定条件が付いた運転免許証の海外のケースとしては、アメリカのカリフォルニア州やニュージーランドで、日の出から日の入りまでの時間帯に運転を限定する制度があるほか、アイルランドでは、運転できる場所を自宅から30キロ以内に限って認めるといった制度があるということです。

事故原因と限定条件

警察庁によりますと、去年1年間に起きた75歳以上のドライバーによる死亡事故は459件で、477人が死亡し、全体の死亡事故に占める割合は13.5%でした。
原因別では、ハンドル操作を誤ったりアクセルとブレーキを踏み間違えたりといった「運転操作の誤り」が28%と最も多く、次いで居眠りなどによる前方不注意が23%、交差点で安全確認を怠ったといった安全不確認が22%などとなっています。
警察庁が75歳以上のドライバーを対象にした運転免許証を導入するかどうかの条件として今後、検討が始まる車両は「セーフティ・サポートカーS」と呼ばれ、現在、警察庁や国土交通省、経済産業省などが普及に力を入れています。
具体的には、車に搭載されたレーダーやカメラなどが前方の歩行者や車などを検知し、アクセルとブレーキの踏み間違いによる急加速を防ぐ機能や、衝突するおそれが高い距離にまで近づくと自動ブレーキが作動する機能、それに車線からはみ出すなどした場合にブザーなどで注意を促す装置などが装備されているということです。
また時間や場所の条件としては、夜間は周囲が見えにくくなることから日中の時間帯に限ることや、スピードを出しやすく重大な事故につながりかねない高速道路での運転は認めず、一般道路だけに限定することなどが今後の検討案として想定されるということです。
一方、人口減少が進み高齢者が買い物や病院に向かうための交通機関が少なく車の運転が欠かせない地域もあることから、車に代わる移動手段の確保など生活をどう支援していくかも課題だということです。
条件付きの運転免許証の導入には法律の改正が必要になることから、警察庁は専門家による調査・研究を行いながら検討を進めていくことにしています。

有識者会議のメンバーは

警察庁の有識者会議のメンバーの1人で、高齢者ドライバーによる交通事故に詳しい実践女子大学の松浦常夫教授は「運転免許証を自主的に返納するかどうかの判断は、高齢者自身に任せられているのが現状で、安全な運転ができるうちはいいが、高齢に伴い安全運転ができなくなっているドライバーもいる。条件付きの運転免許証の導入によって、そうしたドライバーの免許証の返納につながり、結果的には高齢者にとっても社会全体にとっても交通事故を減らす要因になると思う」と話しています。

また、今後の課題としては「高齢者ドライバー一人一人の状況は違うので、限定する条件を誰がどう決定しどこまで制限するのかを明確にしながら話し合っていく必要がある。海外では運転免許証に条件をつけるかどうか、ドライバーを診断した医師などが判断するケースもあり、こうした例を参考にしていくべきだと思う」と話しています。

そのうえで、松浦教授は「運転免許証を自主的に返納した高齢者ドライバーへのその後の支援について、警察だけではなく地域全体で考え、街作りの一環として議論していくべきだ」と話しています。