相続1000兆円時代へ (日本経済新聞より)

個人の金融資産の半分に当たる900兆円超を65歳以上の高齢者が握る日本。相続によって近い将来、子や孫へざっと1000兆円が移る。

「支店、東京都内にあるんですか?」。預金者が亡くなると、その資産を子どもや親族が相続する。その際、四国にある地方銀行では、こう尋ねられることが増えた。子世代は地元を離れ、大都市圏に住んでいるケースが多く、自分たちにとって利便性のよい金融機関に資産を移す。

 

日本は年間で約130万人が亡くなる多死社会を迎えた。2030年前後には同160万人程度が亡くなる。つまり多相続時代ともいえる。

相続によって個人の金融資産はどう移動していくのか。信託銀行最大手の三井住友信託銀行の協力を仰ぎ、試算した。17年3月末時点の株式や現金などの家計の金融資産をもとに、総額は変わらない前提として都道府県ごとの流出入をみてみる。すると今後20~25年の間に首都圏と近畿圏、北信越を除き、ほぼすべての地域で減少に転じることが分かった。減少率が最も高いのは四国で17.8%にのぼる。

他の地域に移動する金融資産は約9兆円。ちょうど大手地銀1行分の預金量に相当する。東北は14.6%減で約13兆円が流出する。一方で首都圏は9.8%増え、国内の金融資産の4割を占める。相続によって、マネーの東京集中が加速する。

家計の金融資産のうち、預金が約半分を占める。預金は銀行にとって貸し出しの原資だ。貸し出しに回せるお金が減るなど「銀行経営に大きな影響を与える」とある銀行幹部は打ち明ける。

日本全体でみれば、預金は増加の一途で、日銀によると、国内銀行の17年3月末時点の預金残高は745兆円。前年に比べ6.2%増え、過去最高となった。

ただ、個別に見ると、減少に転じる銀行もある。上場地銀82行・グループのうち、17年3月末時点の預金残高が前年に比べ減ったのは6行だった。このうち4行は東北地方の地銀だった。

 

預金の流出要因は、相続にとどまらない。「インターネット支店で高金利で集めた定期預金のお金が、満期を迎えて他行に流出している」。山形県と秋田県を地盤とするフィデアホールディングスの担当者は嘆く。同社の17年3月末時点の預金残高は前年に比べ1.7%減の2兆5430億円になった。

人口減で預金が減るのを食い止めようと、インターネット支店で店頭より高金利の定期預金を展開し全国からお金を集めた。

 

しかし日銀のマイナス金利政策導入後、定期預金の金利を引き下げざるを得なくなると、顧客は預金と共に去って行く。人口減に相続資産の流出、そして運用難。日本が迎える少子高齢化に伴う問題に地銀は直面している。