広がる自転車保険 (毎日新聞より)

自転車の対人事故を補償する保険が普及してきた。

自転車事故で多額の賠償を求められる事例が相次いだことで、一般家庭の関心が高まっているのに加え、被害者救済のため加入を義務付ける自治体も出ているためだ。10月からはプロの整備を受けた自転車を対象に対人事故の損害を補償する「TSマーク制度」の補償限度額が2倍の1億円に引き上げられることになっており、自動車に比べ圧倒的に多い「無保険運転」の減少につながるか注目される。

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自転車事故を巡っては、男子小学生が起こした人身事故の賠償額が争われた2013年の神戸地裁の訴訟で、保護者に約9500万円の支払いを命じる判決が出るなど、近年は賠償額が高額化している。一方で車やバイクのような強制的な保険加入の仕組みが自転車にはなく、加害者・被害者双方が重い負担を背負うケースが少なくない。このため、損保各社は他人にけがをさせた場合に備えた任意の自転車保険の販売を強化している。大手3損保グループが取り扱う同保険の16年度の契約件数は約70万件と前年比1.3倍に伸びた。兵庫県や大阪府など、自治体が自転車保険の加入を条例で義務付ける動きも広がっている。

一方、任意保険が自転車に乗る人に付くのに対し、TSマークの保険は自転車自体に適用される。1500~2000円程度の整備料で1年間補償が受けられる制度で、交付枚数は09年度の約140万枚から昨年度は233万枚にまで伸びた。10月1日から補償限度額が1億円に増額されることで、利用者の増加が期待されている。ただ、7000万台とも推計される国内の自転車台数に比べると、保険加入者はまだまだ少数にとどまる。TSマークも、補償対象は相手を死亡させたり重度の障害を負わせたりした場合のみで、物損事故は補償されない。TSマークの保険を引き受ける三井住友海上の担当者は、「マークはあくまでも最低限のセーフティーネット。自動車と同様に任意保険にも加入してほしい」と呼び掛ける。

【TSマーク】

 警察庁所管の公益財団法人・日本交通管理技術協会が、自転車安全対策の一環として1979年に交付を始めた。協会の検定に合格した自転車安全整備士(現在約7万人)が自転車店で点検・整備し、安全と認めた自転車に貼る。TSは「TrafficSafety」(交通安全)の頭文字。82年からは事故被害者の救済などを目的に、自分や相手が死傷した場合に補償する保険が付けられた。マークは店によって2種類あり、青色の支払限度額が1000万円、赤色の限度額は10月から1億円に引き上げられる。有効期限は1年間。全国約1万4000カ所の自転車店で交付されている。