医療費削減で導入された「重症患者向けの高報酬ベッド」が医療費膨張の要因に

毎年ほぼ1兆円ずつ増える医療費。

その一因は公的保険から医療機関に払う診療報酬の見直しにある。

12年前に導入された重症患者向けの高報酬ベッドは厚生労働省の想定を超えて急増し、医療費を膨らませた。推定上振れ額は2兆円超。

今春の報酬改定で導入した「急性期一般入院料2」ベッドのことだ。

現在、最も多い病院ベッドは患者7人に看護師1人を配置する「7対1」ベッド。基本報酬は1日1万5910円と最高額だ。

 

新しい「一般入院料2」の看護師配置は「10対1」と「7対1」より少なく、報酬は1万5610円と「7対1」と大差ない。人件費が浮く分、病院の収支にプラスという触れ込みだ。

狙いは「7対1」ベッドからの移行を促すことだ。

厚労省は06年度の導入時に「7対1」ベッドは重症患者向けとしたが、基準は看護師数だけで患者の状態は問わなかった。看護師さえ増やせば、それまで最高額だった「10対1」より2割の増収になるため「7対1」に移る病院が急増した。

 

06年度の導入時、「7対1」ベッドへの一般の関心は低かった。注目されたのはマイナス3.16%と過去最大の診療報酬改定の引き下げで、医療費抑制効果を4500億円と政府は公表した。

だが、想定外の「7対1」の急増で医療費は上振れし、抑制効果は帳消し。

 

問題は個々の病院ではなく、報酬評価の基準を看護師の数とし、患者の実態やケアの成果を後回しにした制度にある。誤った基準に病院が適応して実態とズレが生じ、ツケはじわじわ国民負担に回る。

経済協力開発機構(OECD)によると日本の病院の平均在院日数は約17日と英米独の6~9日と比べ長い。人口当たりベッドが多く、高報酬のベッドを埋めることが病院にとって重要な経営努力となるからだ。