中小企業向け保険で攻勢 (日刊工業新聞より)

大手生損保会社が中小企業向け保険市場の開拓に動いている。

 

中小企業の保険市場は大手保険会社による開拓が比較的遅れており、さらに企業の業績回復もあって、市場自体の成長性が期待されている。フロンティアの開拓に向け他社との業務提携、地方創生などをキーワードに大手各社が攻勢に出る。

 

「中小マーケットは成長性の高い重要市場」と強調するのは、住友生命保険営業企画室長だ。同社は中小企業向けの生命保険商品に強いエヌエヌ生命保険と業務提携し、4月から本格的に中小マーケットの開拓に乗り出した。具体的にはエヌエヌ生命が持つ「生活障害保障型定期保険」など経営者保険の2商品を住生の約3万人の営業職員を通じて販売。当面は1万2000件の契約獲得の目標を掲げている。

 

矢野経済研究所の調査によると、法人向けの生命保険の年間市場規模(年換算保険料ベース)は企業業績の回復を背景に右肩上がりで増加。既に6000億円を突破し、今後7000億円を超える見通しもある。

4月からの平準払い保険料引き上げにより、生保市場は売れ筋だった個人年金や終身保険など貯蓄性保険の販売苦戦が予想される。こうした中、各社とも法人市場は成長が期待できる数少ない市場の一つと位置付ける。

 

実際、住生に限らず日本生命保険、第一生命保険なども経営者向けの保険商品を相次いで投入。もともと中小向けの保険市場でシェアの高い大同生命保険を交え、大手生保の本格攻勢で競争激化は必至だ。

ただ開拓は一筋縄ではいかない難しさもある。中小向け保険商品は事業承継や財務などの知識が不可欠。個人向け保険とは違う提案力が営業職員に要求されるためだ。

 

住生ではエヌエヌ生命と定期的にミーティングを重ね、運送業、製造業など業種に応じた商品の提案手法などを共有。数カ月かけて職員が、業種ごとに最適な販売提案ができるよう研修に力を入れてきた。堀室長は「当社のシェアはまだ数%に過ぎない。ただ今回の提携を通じ、将来的には2ケタまで高めたい」とし、今後は両社共同による商品開発も視野に入れながら、シェアの拡大を目指す。

 

損保業界でも損保ジャパン日本興亜、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損保など大手4社による市場開拓の動きが進む。東京海上日動火災保険は健康経営や地方創生をキーワードに営業を展開。同社はもともと商工3団体との連携による事業展開を軸としてきたが昨年は地方創生の専門組織も新設。中小企業とパイプの太い地方銀行など各関係機関とのネットワーク作りを着々と進め本年度から本格的に市場開拓に踏み切る。

 

例えば健康経営。顧客の健康経営を支える各種サービスの提案を強化するほか、商工3団体向けの団体保険では経済産業省などが認定する「健康経営優良法人」となれば、保険料を5%割り引くといった独自の取り組みも始めた。

 

損保は生保に比べて早くから中小企業市場の開拓に力を入れてきた。特にサイバー攻撃をはじめ企業活動の新たなリスクに対応する商品やサービスの開発が続々と進む。新種保険は「約6500億円の開拓余地がある」(大手損保幹部)とされており、市場をめぐる大手同士の競争はますます激しくなりそうだ。